「歯周病」と聞いてもピンとこない方も多いかもしれませんが、実は人類史上最も感染者数が多い疾患のひとつです。2022年の歯科疾患実態調査では、日本人の約半数が罹患しており、30歳以上では約80%に何らかの歯周病が見られます。まさに「国民病」と呼べる存在です。
歯周病とは?
歯周病とは、歯肉・歯根膜・セメント質・歯槽骨などの歯周組織に起こる炎症性疾患の総称です。主に細菌感染が原因で、大きく2段階に分類されます。
- 歯肉炎:歯肉のみの炎症。適切なケアで完全回復が可能。
- 歯周炎:炎症が歯槽骨まで進行した状態。完全な回復は困難で、進行を止めることが治療の主目標となります。

歯周病の原因と進行
主な原因は歯と歯肉の間に蓄積する歯垢(プラーク)に含まれる細菌です。1グラムの歯垢には800〜900億個もの細菌が存在し、放置すると歯石となって除去が困難になります。
進行は3段階に分かれます。
- 初期(歯肉炎):歯肉が赤く腫れ、歯磨き時に出血。歯肉ポケット3mm以下。痛みはほぼなし。
- 中等度歯周炎:歯肉ポケットが4mm以上に深まり、歯槽骨が溶け始める。
- 重度歯周炎:歯肉ポケット6mm以上。歯が大きくぐらつき、最終的には脱落。
特に危険なのは、初期段階ではほぼ自覚症状がない点です。痛みなどの明確な症状が現れる頃には、すでに重度に進行していることが多いのです。
全身疾患との深い関わり
近年の研究で、歯周病は口腔内だけでなく全身の健康にも影響することが明らかになっています。
- 糖尿病:双方向の関係があり、糖尿病患者は歯周病リスクが約3倍。歯周病治療で血糖値が改善するケースも。
- 心臓血管疾患:歯周病により心血管疾患リスクが最大19%(65歳以上では最大44%)上昇する可能性。
- その他:早産・低体重児出産、呼吸器疾患、関節リウマチ、アルツハイマー型認知症との関連も報告されています。
全身への影響メカニズムは主に3つです。①炎症で傷ついた歯肉から細菌が血流に入り込む、②炎症性サイトカインが全身を巡る、③過剰な免疫応答が全身の免疫バランスを乱す、とされています。

リスク要因
局所的要因:不十分な口腔清掃、歯ぎしり・食いしばり、口呼吸、歯並びの問題など。
全身的要因:喫煙(非喫煙者の約3倍のリスク)、糖尿病、ストレス、栄養不足(タンパク質・ビタミンC)、加齢、遺伝的要因など。
まとめ
歯周病は初期段階での自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行しやすい疾患です。単なる口腔の問題にとどまらず、全身の健康リスクを高める「サイレントキラー」でもあります。日頃の丁寧なブラッシングと定期的な歯科検診が、最も重要な予防策です。
